そのデータが獲得された環境を知る
前回までで、実数の単純な評価は危険で、比率に注目しました。
また前回同様、本稿はクリティカル・シンキング、情報収集・分析の事例として新型コロナウイルスの情報を使用するものであり医学的見地からの専門的な提案ではない事をお断りしておきます。
さて、致死率が出たので、それを元に判断するのも正しいですが少し待ってください。
数字の比較なので客観的になったのですが、もう少し必要です。
そもそも中国の統計データ、中国CDCのデータが不正確だ、との意見もあります。
これはWHOなどからも不正確、不誠実と批判されたので考慮したほうがいいですね。
ただそれをここで言うとこのブログ自体が全てご破算になりますので、不正確かもしれませんが不誠実ではないと前提しましょう。
別の表現をすれば一所懸命に調査したけれども、なかなか正確な数値は把握できなかった状態です。この様なことは調査ではよくある事です。
先ほどの「致死(致命)率」でそれが統計上入る可能性があるのが、分母の「罹患数」ですね。
素人なりに考えても、死亡か否かは恐らくどの様な状況でも明らかでしょう。医療現場の最前線では極限状態での疲労の中でカウント間違いは発生する可能性がありますが、ほぼ正確でしょう。
ですので分子の「死亡者数」は真の値から大きな乖離はないと見ていいでしょう。
しかし一方の「罹患数」はどうでしょう? 現場は混沌としており新型なのに、そんなに正確に検査できるものでしょうか? また、たとえ正確に検査できたとして、本当に新型コロナウイルスのみが死因だと言えるのでしょうか?
これは因果関係の把握ですね。クリティカル・シンキングの研修の中で出てきた「第3変数の排除」が成立しているか否かになります。
代表値を見るときには、もう一段の分解を
致死(致命)率=3.84%。
これを単純に他の似たようなウイルス性の病気の致死率と比較しているサイトもありましたが、あまりお勧めではありません。
例えば、
エボラ出血熱: 致死(致命)率=50.0%
MERS: 致死(致命)率=33.4%
SERS: 致死(致命)率=9.6%
新型コロナウイルス(暫定値): 致死(致命)率=3.4%
新型コロナウイルス(推定値): 致死(致命)率=1.0%
季節性インフルエンザ: 致死(致命)率=0.1%
このように致死性の高い感染症と比較されるとその時点で、恐ろしいイメージです。
そしてこのデータを掲載しているWebsiteのヘッドラインには「新型コロナ、致死率は季節性インフルエンザの10倍」と付いています。
暫定値の3.4%と比較しなかったのは良心的ですが、それでも恐怖を感じますね。
また、前述した「第三変数の排除」(原因と結果以外の3つ目以上の要素があるのではないか?)が排除されず、いろんな要素がごちゃ混ぜ状態で「罹患数」になっている可能性があります。
では、どうするのか。
オススメは、研修の中でやった、もう一段の分解です。
この致死率という数字は言ってみれば、その病気で亡くなった人たちの集団としての代表値です。
老若男女、併存疾患(へいそんしっかん:ふたつ以上の病気に同時にかかっている事)の有無も全部ごちゃ混ぜです。
すなわち、日頃から元気っぱいで特に病気にかかっていない人と日頃から入退院を繰り返し普通の風邪にかかっても重篤化してしまう可能性のある人たちとを全部いっぺんに評価した数値だということです。
ですからここは理患者数を意味のある集団に分けて議論すべきですね。マーケット・セグメンテーションにも通じる考え方です。
普通に考えて仮説を立てると、20歳、30歳代は抵抗力はMaxです。逆に高齢者や乳幼児は低めでしょう。すなわちこの年齢区分の死亡がこの致死率を上げているはずです。
China CDC Weekly 2020 によると全体の致命率は2.3%。
でもその内訳を見ると、
10歳未満の子供は0。
30代までの致命率は0.2%、40歳以上では年齢上昇と共に致命率も上昇傾向の様です。
そして60代の致死率は3.6%、70代で8%、80代以上で15%という報告になっています。
また当然併存疾患の人であれば重篤化する傾向にあり、致死率も高まります。
ここで重要なのは、
「年齢や既存の病気の有無により当然ながら危険度は変化するよ」
という当たり前のことです。
すなわち、この当たり前の区分による評価が全くマスコミ報道の前面に出て来ていません。
データからもわかる様に、10歳未満の子供に関しては死亡者数は0です。また、別のデータですと80%の人たちが軽症です。
これらの情報はほとんど強調されていません。
ここがマスコミ報道の問題です。
コメンテーターなどという人たちは、特異な発言をした方が目立てるので意図的に恐ろしいことを言っている可能性があります。
もう一つの要因:環境要因
年齢や併存疾病による差異ともう一つの注意が必要と感じるのが地域差です。
このデータは中国国内のものです。
人間だからおんなじだ、とも言えますが、地域性は重要です。
中国の公衆衛生状況についてはわかりませんが、都市部は日本並みの医療水準としても地方の農村部になればかなり低くなると考えられます。
もちろんだからこそ別の要素も出て来て、都市部であるほど元々不健康な暮らしをしている、農村部であれば運動量が増え、人間関係のストレスも低く健康的な生活をする人が多い、とも考えられます。
ただ、中国の農村部で充実した医療施設で初期段階の治療開始ができるかどうかを考えると、かなり厳しいと考えても良いでしょう。
そもそも動物のウイルスが変異し新しいウイルスになり人間に感染する様になる環境は衛生的とは言い難く、まさしくその様な環境の中で生活している人がまだ多く中国国内には存在しているものと推察します。
当然この様な環境は患者にとっては悪く、重篤化、致死率の上昇を引き起こすと考えられます。
同じ様な患者がいてもその様な動物との濃厚接触している様な環境が極めて少ない日本国内の方が致死率は低くなると考えても良いと思います。
ですから、結論として
中国国内のデータよりも致死率等の値は日本国内では低くなると考えられる。
高齢者や既往症のある人は悪化する可能性が高いので要注意。
それ以外の人は、季節性インフルエンザ並みの感染症と認識すべきではないでしょうか。
もちろん新型なのでワクチンは無いですし、まだ人類が知らない脅威が潜んでいる可能性もあります。
しかし、既存のコロナウイルスには一般的な風邪として誰もが一度は感染していると見て良い、との専門家の見解もあります。
ただただ、外部の脅威を大袈裟に恐れるばかりではなく人間の種としての高度な防衛機能、免疫システムも信じていいのでは無いでしょうか?
自分の免疫システムは信じずに、マスクや手袋を信じているスーパーモデルもいらっしゃいますが。。。
今世界全体が恐れなければならないのは「デマ」ではないかとも思います。
誰もがインターネットで自分の意見を発言できますが、倫理を持ち得ない人も多いのです。
みなさん、クリティカル・シンキングをベースに「正しく恐れ」ましょう。
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